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草木染の原理

春夏秋冬、劇的に美しく変化する日本の野山――。咲き乱れる花々、萌える緑、そして紅葉…、遠い昔から人は、そうした色をとどめようと様々な工夫をしてきました。その一つが「草木染」です。子供のころに、朝顔の花で色水を作って絵を描いたりしませんでしたか?

あれも、そうした思いの一つで、れっきとした草木染の一種なんです。本格的には、酢(さん)を使って花の色を抽出し、繊維に染め付ける染色方法で「花びら染め」などと呼ばれ、たくさんの人に親しまれています。その歴史は古く、『万葉集』にも

住吉(すみのえ)の 浅沢小野の
かきつはた 衣に摺り付け 着む日 知らずも

の和歌が残され、この時代に「花びら染め」が行われていたことを知ることができます。

ちなみに、その意味は「住吉の浅沢小野に咲く杜若(かきつばた)。あの杜若の花を私の衣に摺(す)り染めにして着る日はいつのことなのだろうか」で、ここでの「かきつばた」は恋人を比喩したものだそうです。さらに、ちなみに!!なんですが、歌に詠まれた「住吉の浅沢小野」は、僕の工房からすぐの所なんですよ。

話を本題に戻して…。
ところが、そのままの花の色を染めたり、植物を煮出した液に繊維を浸したりしただけでは色は薄く、すぐに色落ちしてしてしまいます。そこで、長い経験と知恵から生み出されたのが、金属イオンを用いて発色と定着をさせる方法です。草木染では、藍や柿渋などの一部を除けば、ほとんどがこの方法がとられています。簡単にいえば「化学変化」を起こさせて布を染めるもので、これによって随分と長く色を留めることができるようになりました。もちろん、化学染料ほどじゃないですが…。

この金属イオンと植物から得た染料を結合させる方法を「媒染(ばいせん)」と呼び、銅やアルミ、鉄、チタンなどの金属のほかに、灰汁(アルカリ)や食酢(酸)なども使われます。

なので、植物そのものの色と染め上がりの色は大きく違うことが多々あり、お客さんからも「◎◎が、こんな色になるの?」と、よく驚かれるほどです。むしろ、植物そのものの色を布の移すほうが難しいく、例えば、ウール(羊毛)をコーヒーで銅媒染すると、下の写真(右の毛糸)のように「緑色」になります。

ちょっと話が難しくなりましたが、これが草木染の原理で、植物と金属(鉱物)が作り出した色だったんです。

※追記/厳密には「柿渋染め」でも媒染剤を使います。

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