ひとつ屋の植物染料について
ひとつ屋で取り扱う植物染料は、生薬として販売されているものをはじめ、私たちが染め物や織り物に用いられる植物ばかりを育てている“ひとつ屋染料農園”で自家栽培したものです。
それらは可能な限り農薬や化学肥料を使っておりません。そのため、充分に注意はしておりますが、まれに虫などが混入している場合がございます。染料としての品質に問題はございませんので、あらかじめご了承ください。
安全でナチュラルな作品づくりに、ぜひ!お役立てください。
茜(アカネ)は草木染めを代表する植物の一つで、実際に“赤い根”をもつので、この名がついたのでしょう。インドアカネを含め、世界にはセイヨウアカネ、ニホンアカネなど、温帯から暖帯にかけて50種類以上があるといわれています。特に、このインドアカネは熱帯地方で栽培され、とても根が太く、発色もよいので染めやすい植物染料の一つです。
クチナシ(梔子)はアカネ科クチナシ属の常緑低木で、夏の初めのころになるとジャスミンのような甘い香りの花を咲かせます。古来、その果実は生薬や染料として利用されてきました。その歴史は古く、すでに奈良時代には使われ、平安時代には十二単の黄色(支子色/くりなしいろ)を染めたそうです。そんな“王朝の色”を、ぜひ!楽しんでください。
クヌギ(椚木)はブナ科コナラ属の落葉高木で、日本では岩手県や山形県以南の本州、四国、九州と広く分布しています。古くは「つるばみ」と呼ばれ、その実(どんぐり)の殻斗(帽子)は「つるばみ染め(橡染め)」の染料として用いられてきました(詳しくは下記の色見本をご覧ください)。また養蚕が行われる以前からクヌギの葉にヤママユガ(天蚕)を付けて飼育する方法が行われていたそうです。
ショウガ科ハナミョウガ属のゲットウ(月桃)は、常緑性多年草で熱帯から亜熱帯のアジアにかけて分布しています。日本では沖縄県で広く自生し、一部は九州南部にも分布しています。その葉は染料としても用いられ、暖色系の優しい色を染めることができます。ぜひ!月桃染めにチャレンジしてみてください。
コウボウ(香茅)はイネ科オガルカヤ属の多年生植物で、高さ20~40㎝になり、夏の始めのころには淡褐緑色の穂をつけます。レモングラスと同じ仲間で「香茅」の文字どおり、さわやかな香気があります。日本の伝統色の一つ「苅安色(かりやすいろ)」は、コウボウと同じイネ科の植物で染められており、近い色を染めることができます。ぜひ! そんな色と香りを楽しんでください。
コガネバナ(黄金花)はシソ科タツナミソウ属の多年草で、日本には江戸時代の中期に朝鮮から種子を移入し、小石川養生所(現・東京大学小石川植物園)でも生薬(漢方薬)として栽培されました。草木染めの染料としても優れ、堅牢度が良好なのが特徴で、アルミ媒染や鉄媒染で深みのある色を得ることができます。
五倍子はウルシ科ヌルデ属の落葉高木にアブラムシが寄生することによってできる虫癭(ちゅうえい)。ここに豊富なタンニンが含まれており、古くから染料として用いられてきました。特に、草木染では日本の伝統色でもある「空五倍子色(うつぶしいろ)」と呼ばれる褐色がかった淡い灰色を染めることができます。
伊豆諸島の八丈島(はちじょうじま)に伝わる草木染めの絹織物「黄八丈(きはちじょう)」は、このコブナグサ(小鮒草)で染められています。黄八丈に見られるように美しい黄金色を染めるコブナグサですが、掲載の色見本のとおり、媒染剤を変えることで黄色以外にも明るく優しい色を染めることができます。
ザクロ(石榴)は庭木などの観賞用のほか、その実を食用として栽培されるミソハギ科ザクロ属の落葉小高木です。古来、草木染では実の皮である果皮が用いられます。その方法にもよりますが、おおよそアルミ媒染で黄色、銅媒染でベージュから茶褐色、鉄媒染で濃いグレーから黒色に染まります。
生薬では「紅紫草」と呼ばれる紫根(シコン)。その名のとおり、“紅”や“紫”の色をもつ植物です。江戸時代には生薬としての効能からか、それらで染めた布を病人の頭に巻いて病の平癒を願う習慣があったそうです。しかし、その染め方は一般的な草木染め以上に手間がかかったらしく、それゆえに、紫は高貴な色とされました。
ビワ(枇杷)の原産は、中国南西部で日本には古代に移入されたと考えられています。現在では九州から四国に自生し、温暖な地域では果樹として栽培されています。昔から実を果物として食すばかりでなく、葉やタネも生薬としても利用されてきました。葉を煮出した染料で染めると、あの実を想像させてくれる優しい色に染まります。
檳榔樹は高さ20メートルにもなるマレーシア原産のヤシ科の常緑高木。古来、アジアの各地にこの種子をキンマの葉に包み、石灰と一緒に噛む“噛みタバコ”に似たものがあります。また、生薬としては胃腸に効能があるとされてきました。染料としては「檳榔子染」呼ばれ、アッシュなベージュやグレーが古くから親しまれてきました。
紅花が日本に渡来したのは5世紀~6世紀ごろ。古くは「呉藍」や「末摘花」と呼ばれ、江戸時代には山形県が産地となりますが、化学染料の普及に伴い衰退してしまいました。染め方は一般的な草木染の方法とはことなり、紅花に含まれる赤と黄色を分ける必要があります。そんな、いにしえの“紅”染めに、ぜひ!チャレンジしてみてください!
熱帯から温帯にかけて約50種が分布するマリーゴールド。その名“マリアの黄金の花”と呼ばれたことに由来するそうです。春にタネをまくと、夏には大きく育つので、盛夏の前に剪定し、風通しをよくしてやります。その際に収穫した茎や葉、そして花は、とてもよい染料になり、掲綿を含めた各種の繊維をしっかり染めることができます。
ミロバランはシクンシ科の落葉中高木で熱帯アジアを原産としています。古くに日本へも伝えられ、正倉院の『種々薬帳』にある「呵梨勒」とはミロバランだとされています。タンニンを多く含むミロバランは、アルミ媒染で黄色、鉄媒染でカーキー色に染まり、無媒染のまま上から藍で染めると青磁に似た薄い緑色になります。
ヤマモモ(山桃)はヤマモモ科ヤマモモ属の常緑樹で、6月ごろに桃のような果実をつけることからこの名がつけられました。草木染めに用いるのは、実ではなく、樹皮です。タンニンを多く含むヤマモモの樹皮は、とても味わい深く落ち着いた色を染めることができます。染め方も難しくはないので、ぜひ!チャレンジしてみてください。
レモングラスはイネ科オガルカヤ属の多年草でレモンに似た香りが料理や茶、薬として利用されています。特に、その成分は人の脳に作用し、疲れたときや気分転換したいときに効果があるといわれています。染料として用いる場合にも葉を煮出すので、染色を楽しむと同時に香りで癒されることができます。