ずいぶん前に投稿したブログ「“明治の産業革命”のように」の中で、「古い機械で生み出される製品にとても興味がある」というようなことを書きました。
しかし、私が興味を持っているものは、単純な道具でも、現代的な機械でもありません。
すでに道具とはいえない。しかし、機械と呼ぶには、人の手や感覚との関わりがあまりにも深い――。
ひとつ屋では、漢字で表せば、道具と機械のあいだにあるものを「器械」と捉えています。
道具は、人の手によって直接使われます。一方、機械は、動力や自動化によって仕事を進め、人が直接行っていた作業の一部または多くを担います。
そのあいだにある器械は、人が手や足で操作し、人の力を補いながら、道具だけで行うよりも多く、安定して作ることを可能にします。それでも、人の判断や調整、感覚、技術は、物づくりの中に残されています。
つまり、器械とは、人を物づくりから排除するものではありません。人とともに働き、人の仕事を支えるものです。
織機技術の発展を見ても、人力織機から動力織機、自動織機、そしてコンピュータ制御の織機へと、織物を作るための仕組みが段階的に変化してきたことが分かります。
ひとつ屋が目指している物づくりのスタイルの一つに、こうした「道具と機械のあいだにある器械」を使った生産のカタチがあります。
昔の物づくりを、そのまま再現したいわけではありません。古い器械を集めて、飾って眺めたいわけでもありません。
素材に触れ、器械の動きを見ながら、人が考え、手を動かし、細かな調整を繰り返す。その一方で、純粋な手作業だけでは難しい生産性や安定性を、器械によって補う。
そんな古くて新しい生産のカタチを、今の時代に実践したいと考えています。
そして、ついに! その夢を実現するため、この投稿を書く数日前に、大阪の工房から織物に関わる道具や器械を、三重県伊賀市の古民家工房へ運び入れました。
どれも、長い時間をかけてコツコツと集めてきた年代物ばかりです。一つひとつに異なる構造や動きがあり、すでに強い愛着を感じています。
▼ 大阪の工房から伊賀の古民家工房へ運び入れた、織物に関わる道具と器械
今はまだ、運び入れただけの状態です。
これから一つずつ状態を確認し、掃除や修理、調整を行いながら、作業の順序や工房内の配置についても考えていきます。
そして、この古民家工房を、古い器械を保管するだけの場所ではなく、器械を実際に動かし、物づくりに使う「自らの思いを実践する場」へと変えていこうと考えています。
ひとつ屋が、道具と機械のあいだにあるものを「器械」と位置づける理由については、「明治の“器械”と令和のAI」でも紹介しています。
今後は、ここから生まれる物づくりについてはもちろん、運び入れた器械の構造や役割、修理、調整、試運転の様子についても、一つずつ紹介していきます。
ぜひ! 楽しみにしていてください。