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“明治の産業革命”のように

ひとつ屋では“草木染を仕事にしたい!”と真剣に模索しています。それは、伝統工芸やハンドクラフトの作家などとしてではなく、私たちが目指すのは“産業としての草木染”です。しかし、これを実現するためには、一定程度の生産性や経済性(コスト)が求められます。

その一方で“草木染がもつイメージは大切にしたい”とも考えています。例えば、それは天然染料らしい色味だったり、手仕事が醸し出す雰囲気だったりしますが、このことと“生産性”や “経済性” を両立させるのが非常に難しい課題です。

あちらを立てればこちらが立たず――。この問題を解決するために、いろいろと考えました。そしてヒントとなったのが、とある博物館で見た明治時代の機械たちです。


「殖産興業(生産を増やし。産業を興す)」をスローガンに近代化を推し進めた明治時代の日本。非常に短期間に鉄道や道路、電話や郵便などのインフラを整備し、これをもとに製鉄や製糸に代表される官営模範工場を創設して産業の近代化を図りました。

と、まるで日本史の授業のようであり、近代化に邁進する明治日本が勇ましくさえ感じます(その内容や結果については賛否が分かれるところです)が、実際に当時の機械を見ると、とても素朴で、楽器に例えると“アコースティックな”という表現がピッタリな雰囲気です。

それは「道具から機械への発展途上」にある存在で、特に生糸や綿糸に関わる機械は、その人間臭い動きから産出されるものの雰囲気に「私たちの問題を解決してくれるのはこれだッ!」と直感しました。


それ以後、まるでマニアのように古い機械を探しました。当初、さすがに明治時代のものは難しいにしても、昭和の中ごろまで作られていた機械ならネットで探せばあるだろうと安易に考えていましたが、それは間違いでした。あちこちに電話をしたり、実際に訪ねたりもしたのですが、その多くで「数年前までは作っていましたが、職人さんも高齢で—」や「もう部品が手に入らくて修理すらできません」などの返答ばかりでした。それでも、たまたまネットで見つけたり、復刻版を作っている方を紹介していただきながら、ひとつ一つ古い機械を集めています。


そこで今回は、綛から糸車(ボビン)へ糸を巻き取る機械を紹介します。まさに“道具と機械の間”といったもので、どこか手作業のような動きに魅了されます。ご覧ください。

 

ほとんどが木でできた機械にもかかわらず非常に正確にいとを糸枠に巻き上げていきます。特に驚いたのが、巻き上げた糸が下の写真のとおり、糸枠の胴の中央が高く(厚く)、外側(上下)が低く(薄く)巻き取っているところです。糸を振るためのガイドになる溝の彫り方にわずかな違いを付けることで、これを成し遂げるなんて! 正直、本当に驚きます。


少し話は長くなりましたが、ひとつ屋が目指す“草木染を産業にしたい!”という思いは、今流行りの「サステナブル(持続可能な産業)」だったり、「SDGs」だったりするのですが、そのヒントが大量生産・大量消費の原点となった産業革命の時代の機械にあったのが皮肉なことです。

最後に、ひとつ屋ではこうした“古い機械を使った新たな物づくり”にチャレンジしていきます。今後も、私たちなりの物づくりを「ひとつ屋の取り組み」で今後も紹介してまいりますので、ご意見やアドバイスなど、よろしくお願い申し上げます。

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