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ネパールの自然布「Akasa textile」

ネパールの風土と自然布

以前から親交のあったネパール。平地から山岳地帯までの高度差が大きく、寒暖差や乾湿の変化も激しいこの土地で布は、身を飾る特別なものではなく、日々の生活を支えるための必需品として用いられてきました。

山の冷え込みや強い日差しに対応するため、繊維は太さや撚り、織りの密度を変えながら、さまざまな風合いを
有したのです。それらは特定の様式として固定されたものではなく、風土や暮らしに応じて、自然に選ばれ、続いてきた布でした。

こうした布には、土地の気候や暮らしの感覚が織り込まれ、素朴な美しさと優しさを備えています。

▼ “世界の屋根”と称されるヒマラヤ山脈

“世界の屋根”と称されるヒマラヤ山脈


Akasa textile という自然布

ここで紹介しているネパールの自然布を私たちは「Akasa textile」と呼んでいます。それは、特定の技法や素材を示す名称ではなく、これらの布がもつ背景や佇まいに敬意を払った呼び名です。

「Akasa(アカサ)」 はサンスクリット語で「空」「天空」「場」を意味する言葉です。

形あるものを指すのではなく、空気や光、気配のように、すべてを包み込み、成り立たせている“空間そのもの”を表します。ネパールの山岳地帯で育まれた布には、大地の澄んだ空気や水、人々の祈りや暮らしの気配が織り込まれています。

※自然布(しぜんふ)とは、葛、藤、芭蕉、カラムシ、大麻など、野山に自生する植物の樹皮などから得た繊維を糸にして織った布のことをいう。木綿が普及する以前から用いられてきたので「古代布」や「原始布」とも呼ばれている。非常に手間と時間がかかる希少な織物である。

▼ ネパールの「Akasa textile」と、ひとつ屋の「山布」

古代布(山布)究所


生活のなかで使われてきた布

Akasa textileは、特別な場のためにつくられたものではありません。日々の暮らしのなかで使われ、傷めば繕われ、必要に応じて形を変えながら、生活とともにあり続けてきた布です。

家のなかで使われる布、身体を守るための布、作業のための布――。用途は明確に分かれているというよりも、暮らしの流れのなかで自然に使い分けられてきました。そこには、布本来の姿が感じられます。

工房と生活の距離が近いことも、ネパールの自然布の特徴です。織る人の暮らしや信仰と切り離されることなく、その土地の時間や感覚が、そのまま布に反映されています。

▼ ネパールでは今も、多くの工房で「手機(てばた)」が使われています

自然布(山布)研究所/ネパールの手織工房


「Akasa textile」と「山布」

日本の自然布が、湿潤な気候や四季の移ろいのなかで育まれてきたのに対し、ネパールの自然布は、大きな高度差と強い寒暖差、乾湿の変化のなかで形づくられてきました。同じ“自然から得られる繊維”であっても、風土が異なれば、布のあり方も自ずと変わっていきます。

日本では、繊維の細さや肌触り、季節ごとの使い分けが重視されてきましたが、ネパールの自然布には、耐久性や保温性、環境への適応といった要素が、より率直に表れています。

現在、ひとつ屋では里山での自然布づくりの取り組みと並行して、ネパールで作られている自然布との連携にも取り組んでいます。日本とは気候風土が異なる遠い国ですが、“自然からの恵みで布を織る者”として、今後もネパールの自然布を紹介しながら、さまざまな交流を続けていく予定です。


ひとつ屋の自然布「山布」を見る