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ひとつ屋シルク

絹の国――放棄耕作地の再生

かつては世界一の生糸(絹)生産国であった日本––。1950年代には世界の生産量の約60%を占めるに至り「絹の国」とまで称されました。ところが、今日では国内消費の99.8%が海外からの輸入品となり、それ以前からの絹(養蚕)文化も失われつつあります。

ひとつ屋では、近代以前の素朴な絹製品に憧れて、小規模ながらも養蚕に取り組んでいます。放棄耕作地を再生し、2021年の春に養蚕用の飼料となる桑(一之瀬)をメインに、ジャム用の桑(マルベリー)を加えて約60本の桑を植えました。

その後も桑畑を広げ、桑の生長を待っている間に飼育のための養蚕所を作り、2023年から養蚕を始めました。

桑の葉は蚕の唯一の飼料です。葉の水分量や繊維質、栄養状態はそのまま蚕の成長に影響し、結果として繭や糸の質に反映されます。畑の管理は絹づくりの最初の工程であり、品質管理の入口でもあります。

▼ 桑の植え付け。放棄地を整え、その苗を植えるところから始まりました。

桑の植え付け

 

▼ 成長した桑畑。葉の量と質が安定してくると、養蚕の条件が整います。

成長した桑畑

 


養蚕環境――育てるための空間を設計する

蚕の生育は温度や湿度、通気性の影響を強く受けます。小規模管理を基本とし、観察と調整が行き届く環境を整えています。空間設計は管理精度に直結します。

▼ 養蚕の部屋と棚をDIYで制作。空気の流れと管理動線を考えて組み立てます。

養蚕の部屋と棚

 

▼ 完成した養蚕部屋と棚。養蚕棚では各段ごとに状態を確認しながら蚕の管理をします。

完成した養蚕部屋と棚

 


蚕と繭――小さな繭の中に長い糸が眠っています

繭は、蚕が吐き出した絹の主成分(フィブロイン)をセリシンが包み込む構造を持ちます。この連続した単繊維が、絹特有の光沢としなやかさの基盤になります。繭の状態を見極め、次の工程へつなげます。

▼ 桑の葉を食べながら成長する蚕。やがて繭づくりに入ります。

成長する蚕

 

▼ 営繭が始まると、短期間で繭の形になっていきます。

営繭

 

▼ 完成した繭。一粒の繭は数百メートルの一本の繊維でできています。

完成した繭

 

▼ 収繭。美しい繭は「ひとつ屋シルク」となります。

収繭

 


絹を紡ぐ――「ずり出し」という技法

一般的な生糸づくりは「繰糸」と呼ばれ、複数の繭糸を同時に引きそろえ、一定の太さに整えて一本の糸にします。均質で安定した糸を得るための合理的な方法です。

ひとつ屋ではそれに加えて「ずり出し」の技法も用います。繭をほぐしながら繊維を束ね、糸として引き出す方法で、考え方としては「紡糸」に近い工程です。

繰糸が連続した単繊維を揃える工程であるのに対し、ずり出しは繊維の重なりや揺らぎをそのまま糸にします。太さや表情は一定ではありませんが、繭由来の質感や空気感が残り、光の反射はやわらかくなります。

草木染の染料も穏やかに定着しやすく、素材感を活かすための「絹を紡ぐ」選択です。

▼ 繭から糸を引き出す「ずり出し」工程。用途に応じて方法を使い分けます。

ずり出し工程

 

▼ 実際の作業の空気感を映像でご覧いただけます。


糸から布へ――草木染と相性のよいシルク

紡いだ糸は用途に応じて撚りを調整し、織りへ進みます。織り上がったシルクは軽く、しなやかで、適度な吸放湿性を持ちます。草木染を施すと色は派手に主張せず、深く落ち着いた表情になります。

▼ 織機にかかったシルク。糸は織りによって布になります。

織機にかかったシルク

 


シルクのワークショップ

ひとつ屋のシルクづくりは、桑、養蚕、糸づくりまでを一貫して進めています。まずはその工程を、実際に手を動かしながら体験できるワークショップを開催しています。

繭から糸を引く繰糸と、ずり出しによる紡糸的な糸づくりの違いを、見て触れて確かめていただけます。

※ 開催時期・募集開始の告知は、こちらのページでお知らせします。