カテゴリー: ブログ

ひとつ屋の日々の仕事や判断、その背景にある考えを、いくつかのカテゴリーに分けて記録しています。畑で植物を育て、染め、織り、道具を整え、作り続ける。その過程で起きた迷いや選択を、現場の視点から綴っています。完成品だけでなく、そこに至るまでの時間や思考も含めて残す記録です。

  • 後染め用アロハ

    後染め用アロハ

    草木染で染めることができるのは天然繊維に限られています(ただし「レーヨン」は、染めることができます)。

    なので、衣服を染めるにも綿(コットン)や絹(シルク)、羊毛(ウール)だけでできたものを探さなければなりません。最近は技術の進歩もあって「これが綿なの?」と思うような生地もあり、その種類も増えましたが、縫製している糸までを天然繊維である “綿糸縫製” を探すと、せいぜい見つかるのはTシャツくらいです。

    そこで、自分で作ることにしました!

    その試作第一号は鹿の子のニット生地で作った開襟えりのシャツ。いわゆる「アロハシャツ」です。もちろん、コットン生地を綿糸縫製しているので「後染め」が可能です。糸までしっかり染めることができます。

    後染め用アロハ
    これからは「後染め」「先染め」にかかわらず、いろんな衣服を作っていきたいと思います。


    ※ここで紹介した製品は、草木染工房 ひとつ屋のショップコーナー(実店舗)で販売しておりますが、1点限りのものですので、ご来店時に sold out の場合がございます。あらかじめご了承ください。また、私たちの製品に関してのご質問などがございましたら、お気軽にお問合せください。


     

  • デザイン進化論!?

    デザイン進化論!?

    子供のころから二条城が大好きで、この歳になるまで幾度となく訪れています。そのたびに何かしらの発見があるのですが、先日は唐門でこんな装飾金具を発見しました。

    デザイン進化論!?


    その図案から、こんなデザインができました。
    デザイン進化論!?


    なんで? 二条城の装飾金物から、このデザインになったの――? その経緯は下図のとおりです。思いのほか時間がかかってしまいました。

    デザイン進化論!?

    デザイン進化論!?

    デザイン進化論!?

    デザイン進化論!?

    デザイン進化論!?

    デザイン進化論!?

    「これをこうして、こうなって—」と、CADでいじくっているうちにたどり着いたデザインです。もちろん、染色用の型紙(染型)にしようと思っています。こんな感じの型は単純ながら、いろんな場面で使うことができる、便利なデザインなんですよ。「水」や「花」「花火」をイメージさせたり、「雪」を表現したりするのにも使えそうです。結構、気に入っています。早速、染色の型紙を作って作品にしようと思っています。

  • 『波に千鳥』の“波”の部分

    『波に千鳥』の“波”の部分

    今日は先日のブログ『Tシャツ「波に千鳥」』で紹介した “波” の部分についてです。

    Tシャツ「波に千鳥」
    『波に千鳥』の“波”の部分


    絞り染めの方法


    ▼ 今日、紹介するのは、この部分です。
    『波に千鳥』の“波”の部分

    このTシャツの “波” の部分は、いわゆる「絞り染め」です。ちなみに、絞り染めとは、その名のとおり「糸で布を強く絞り、染料が入らない箇所を作って模様を描く方法」なのですが、絞り方や使う道具によって、さまざまな呼び名があります。これは、最も単純な絞り方で「平縫い引締め絞り」という方法です。

    というわけで、その工程を紹介します。

    まずは、下の写真のように布に下絵を描きます。今回は、日本の伝統的な文様である「青海波(せいがいは)」をイメージしてみました。なんて書くと、すごく立派な感じがしますが、実は「どんな柄にしようかなぁ?」と考えていたときに目に飛び込んできたのがCDで、その円弧を利用して描いただけの曲線の重なりです。でも、僕の好きな雰囲気ではあります。

    『波に千鳥』の“波”の部分

    この線に沿って、ひと針ひと針—、できるだけ均一に「括り糸(絞り染め専用の糸)」で縫っていきます。後で強く引き締めるので、ふつうの縫い糸では切れてしまうので “括り糸” を使います。また、このときに引締めながら縫うと、下絵が見えなくなってしまうので、糸がもったいなくても、写真のようにラインごとに縫って、糸を余らせておきます。

    『波に千鳥』の“波”の部分

    すべてが縫い終わると、これを一本ずつ強く引き締め、下の写真のようにします。括り糸でも強く引っ張りすぎると切れてしまいます。でも弱いと、はっきりした柄になりません。微妙な引っ張り加減が必要です。

    『波に千鳥』の“波”の部分

    そして、次は絞った箇所の奥にまで染料が入るように、さらには均一になることを注意しながら浸し染めをします。染料の中で絞った所を揉んだり、開いたりしながら、染料をヒダの中まで透させるのですが、入り過ぎたり、ムラになったりしないように—と、とても気を遣う作業です。

    『波に千鳥』の“波”の部分

    そして、最後が糸を抜く作業です。ここが最もドキドキする作業です! 一本一本の糸を引っ張りながら結び目を切って解いていきます。そのとき決して布に傷をつけてはなりません。糸を引っ張りすぎると、結び目が布を抜けて大きな穴になってしまいますし、引っ張らないと、結び目が布から離れません。ほんとッ! ここが最も神経を使う作業なんです。実は、ここで布に傷をつけたしまったことが何度もあります。

    『波に千鳥』の“波”の部分

    型染めの凛(りん)とした雰囲気も好きですが、僕は絞り染めの素朴な雰囲気が大好きです。具象的な柄を表現するには向いていない技法なのかもしれませんが、この雰囲気を生かした作品も作っていきたいと思っています。

  • 草木染め絹と綿の違い。

    草木染め絹と綿の違い。

    「絹(シルク)」と「綿(コットン)」といえば、誰もが知っている天然繊維ですが、絹は動物繊維、綿は植物繊維で、その性質が大きく異なります。なので、草木染で染色する場合、同じ植物染料を使っても、作業工程はもちろんのこと、その仕上がりの色も大きく違ってきます。

    今日は実際に同じ植物染料を使って同時に「絹」と「綿」を染めてみます。

    染めるのは、同じような薄手のスカーフ(下の写真)です。左が「綿(コットン)」、そして右が「絹(シルク)」です。


    草木染


    ▼ 左が「綿(コットン)」、右が「絹(シルク)」です。

    ▼ コットンのスカーフ。アップの写真です。

    ▼ シルクのスカーフ。アップの写真です。


    染織の工程


    ① まずは大きな鍋に湯を沸かして精錬します。

    精錬(せいれん)とは、布や糸の繊維を染める前にゴミや汚れ、特に糊(のり)や油分を取り除く作業をいいます。その方法は、熱い湯の中につけておくのが一般的なようですが、僕は熱湯に中性洗剤を入れて洗うようにしてから、よくすすいでいます。この作業をしっかりしておかないと、色斑(いろむら)の原因になります。

    ② 染色です。今回は栴檀草(センダングサ)の染料を使います。

    今回は「絹」と「綿」の染め上がりの違いを見るために、すぐに染色をしますが、本来ならこの段階で「絹」と「綿」とでは下処理に大きな違いがあります。そのことについては後に記します。

    ③ 媒染をします。今回は銅を使います。

    媒染(ばいせん)とは、 以前のブログ『草木染の原理 』の原理でも書いたように、繊維に色を定着させたり、発色させたりするものです。主に金属イオンを使用します。ここで、色の違いが決定的になります。

    ④ これを洗浄して乾燥させれば染色の完了です。


    総括


    上記の左が「綿(コットン)」、そして右が「絹(シルク)」です。まったく同じ染料で同時に染めたにもかかわらず、こんなにも色が違います。この差は、繊維にタンパク質が含まれるか否かによって起こります。絹はタンパク質の塊といっても過言ではない繊維で、難しいことは僕にも分かりませんが、タンパク質の電気的吸引力によって染料が繊維に吸着するからだとか。 簡単にいえば「植物から抽出された成分は、タンパク質と引っ付きやすい」ということなんです。なので「絹」のほうが染まりがいいです。染料によっては「綿」より「絹」のほうが簡単に濃く染めることができ、堅牢度もあります。

    ちなみに、上の写真の右にある毛糸も、同じ染料で染めたものです。やはり、ウール100%(タンパク質)なので、シルクと同じような色に染め上がりました。

    僕は染色を始めたころ、この違いをすごく意外に感じました。というのも、一般的(日常生活上)には「綿」より「絹」のほうが扱いにくいというのが常識だったからです。

    では「綿」を「絹」と同じように染めるには、どうすればよいかといいますと、インターネット上には、①と②の工程の間に「豆汁(ごじる)処理」と、よく書かれています。これは大豆のタンパク質を「綿」に吸着させるとうもので、ひと晩水に浸した大豆に水を加え、ミキサーにかけてから布でこし、さらに水で薄めて布を浸してタンパク質を吸着させ、さらに乾燥させるという作業です。しかし、時間も手間もかかるうえに、タンパク質を均一に吸着させるのは至難の業で、ムラなく染めるのは不可能に近いことです。ちなみに、現在では綿にも植物染料を染めることができる専用の助剤があります。

     

  • 100%オリジナルTシャツ

    100%オリジナルTシャツ

    また一つ、大きな壁を越えることができました。

    ついに!! 100%オリジナルTシャツが完成しました。といっても、まだまだ試作の段階で、納得できていない部分がいっぱいあります。それでも、かなりテンションが上がっています。

    100%オリジナルTシャツ

    というのも、本当の意味で “自由にTシャツのデザインができる” ようになったからです。これまでは市販のTシャツを買って染めていたのですが、それでは使えるTシャツの幅はせまく、サイズや色数は増やせたとしても、スタイル(フォルム)が限られていました。メンズ、レディースはもちろんのこと、細身のもの、ゆったりしたもの、丈の長いもの、短いもの—というような変化をつけることができませんでした。特に、上の写真のような「ラグラン袖のTシャツ」は“絶対に無理ッ!!”という状態でした。

    インターネットで「Tシャツ」と検索するば、星の数ほどの検索結果が表示されますが、草木染に使うものは “ただのTシャツではダメ” なんです。素材は、もちろん「天然素材100%」で、しかも!! 縫製の糸までが綿か絹100%でなければいけません。そうでなければ、糸だけが染め残ってしまうんです。さらに、型染をする場合には、特殊な織り方(編み方)をした生地になってきます。

    この条件をクリアする「後染め用Tシャツ」というものもあるにはあるのですが、やはりスタイルはなく、おまけに高価。染めるときに熱い染料に浸したりするので、縫製済みのTシャツでは首周りが伸びてしまうという難点もあります。いろんなメーカーの「綿(コットン)100% & 綿糸縫製Tシャツ」で染色の実験をしたり、さらには自分の思うようにリメイクしたりもしましたが、時間ばかりがかかり、納得いくものにはなりませんでした。

    そんな僕を見ていた洋裁教室の先生が「最初から自分で縫いなさい。手馴れれば、Tシャツくらい1時間で縫えます」。そして「教えてあげます!!」とおっしゃってくださり、手取り足取り――僕だけの“特別授業”が始まり、ついに!! 縫製上は “販売できるほどのTシャツ” を作れるまでにいたりました。

    染めから縫製まで「100%ひとつ屋オリジナルTシャツ」です!!

    まだまだデザインがイマイチですが、すっごく手ごたえがありました!! Tシャツは伸縮性のあるニット(メリアス)生地を使うので、ふつうの洋裁とは違った、独特の縫製技術が必要で、今回は「型紙作り」から「裁断」、さらに「縫製」と3時間もかかってしまいましたが、でも慣れれば1時間も夢ではありません。

    そして、その授業の帰り道に「ついに!! ここまできたか!!」と少し感動しました。縫製を本格的に勉強し始めて3年以上が過ぎました。最初はミシンに糸をかけることすらできなかったのに、今ではYシャツくらいなら縫えるようになりました。そして、今回のTシャツのことで夢が膨らむと同時に、表現の幅が広がったことで「さらに染色技術やデザイン性のレベルを上げなければ!!」と、今はドキドキ & ワクワクしています。