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ひとつ屋の取り組み

◆ 一つひとつを丁寧に作ること

私たちの製品は、染織にかかわる植物ばかりを栽培する 【ひとつ屋染織農園】と、その周辺の里山から得た恵みで作られています。有機肥料と無農薬で植物を栽培し、里山の維持管理で出た雑木や竹を燃料にして “持続可能な物づくり ” を行っています。そのコンセプトは “一つひとつの作業や工程を丁寧にする” こと。この “一つひとつ” へのこだわりが「ひとつ屋」の名の由来です。このページでは、そんな【ひとつ屋の取り組み】私たちの物づくり風景を紹介します。


物づくりのための農業


◆ ひとつ屋染織農園

現在の日本で「農業」といえば、 “食べるもの” を栽培することを意味します。しかし、かつては食品以外にも多くの農作物(工芸作物)がありました。 たとえば、染織に関してだけでも、「藍」や「紅花」、「綿」や「麻」、そして「養蚕」もその一つに数えられていました。ところが今は、 その多くが趣味として栽培されている程度で “産業” としては失われてしまいました。

一方、現在の日本の農業は、とても厳しい状態にあります。例えば、その従事者がわずか5年で15%も減り、急速に高齢化も進んでいます。主たる従事者が65歳以上という農家が65%にも及ぶそうです。 農業の衰退とともに過疎化も進み、放棄耕作地が急増しています。放棄耕作地が増えれば、野生動物と人の住むエリアの境界が曖昧になり、農地や農作物を荒らす獣害も増え、さらに農業の衰退に拍車がかかる悪循環が引き起こされています。

ひとつ屋では、こうした放棄耕作地を再生し、染織にかかわる植物ばかりを栽培する【ひとつ屋染織農園】の運営に取り組んでいます。


◆ 古民家工房

ひとつ屋には大阪の実店舗のほかに、三重県の伊賀市に染織にかかわる植物ばかりを栽培する “染織農園” と古民家の工房があります。ここでは有機肥料と無農薬で植物を栽培し、里山の維持管理で出た雑木や竹を燃料にした “持続可能な物づくり” を行っています。また、日本の伝統的な染織を体験していただけるワークショップも開催しています(※ 古民家工房でのワークショップは、個別にお問い合わせください)


◆ ひとつ屋コットン

上記の【ひとつ屋染織農園】の活動として、最初から取り組んでいるのが和綿の栽培に始まる製品づくりです。

毎年、八十八夜を過ぎたころにタネをまき、秋の終わりに収穫を終える和綿――。秋晴れのもと、収穫した綿をよく乾かし、タネをとる「綿繰り」をします。タネとゴミを取り除いた綿は、ふとん店で「綿打ち(製綿)」をしてもらってから、ひとつ屋にある明治時代の紡績機「ガラ紡(復元機)」で糸にします(もちろん、手紡ぎも行います)。さらに、これを「草木染」し、「手織り」や「縫製」の作業を経て、ようやく製品になります。

いつまでも、この変わらない作業を続けていたいと思います。


◆ ひとつ屋シルク

さらに【ひとつ屋染織農園】の一環として取り組んでいるのが【ひとつ屋シルク】です。かつては世界一の生糸(絹)生産国であった日本––。1950年代には世界の生産量の約60%を占めていましたが、今では国内消費の99.8%が海外からの輸入品となり、それ以前の絹(養蚕)文化も失われてしまいました。ひとつ屋では、古い時代の素朴な絹製品に憧れて、小規模ながらも養蚕に取り組もうと、数年前からコツコツと準備を重ねてきました。

これまでは試験的に続けてきた養蚕部門ですが、2023年度からは本格的にスタートすることになりました。放棄耕作地を再生し、桑を栽培するところから始めた国産シルクづくり――。ひとつ屋では、近代以前の製法で素朴な絹製品と文化を作ることを目指しています。


◆ 古代布研究所

日本で庶民が木綿を着るようになって、わずか400年あまり――。それ以前の人々は何を着ていたのだろうか? そんな疑問を抱くようになって随分になります。少しずつ調べてみると、大麻や苧麻、赤麻、葛、藤、楮、桑、科、芭蕉、於瓢など、さまざまな繊維で織られた布が用いられていたようです。しかし、その製法の多くが失われたり、細々と伝えられるのみとなってしまいました。

そこで’24年度より、ひとつ屋に【古代布研究所】を立ち上げ、それらの植物を採取・栽培し、その製法を探究して日常の暮らしのなかに復活させようと計画しています。今後は研究内容を報告したり、広く情報を集めたり、またワークショップを開催したりする予定です。


ひとつ屋の思い


◆ ふだん使いのアイテム

物づくりの作業のなかで大切にしていることがあります。それは「アートや工芸品であるより“民芸品”でありたい」ということ。日々の暮らしのなかで、気負うことなく使ってもらえる素朴なものを作っていたいと考えています。それは自然のなかから生まれた色や形、そして人々が長い時間のなかで育んだデザインを取り入れながら“温かみのあるアイテム”です。


◆ 伝統と革新

ただただ“古いものは良い”とするのではなく、ひとつ屋では“伝統と革新”の共存に取り組んでいます。その試み一つとして、私たちが長年にわたって蒐集してきた江戸小紋などの古い染色用型紙のデジタル化があります。私たちは、廃棄か、海外へと流出しそうなっていた古い型紙をデジタル化し、レーザー加工機などを使って、さまざまなアイテムに展開する作業にも取り組んでいます。例えば、これまでは手作業だった型紙(プリントTシャツなどを染めるもの)の作製を加工機に置き換えたり、これらのデザインを生かしたボタンやカバンの持ち手なのハンドメイド資材(服飾資材)などがあります。


◆ 道具の話

ひとつ屋では “草木染を仕事にしたい” と真剣に考えています。それは、伝統工芸やハンドクラフトの作家ではなく “産業としての草木染” です。これを実現するためには、一定程度の “生産性” や “経済性(コスト)” が求められます。しかし、それを重視するあまりに、草木染がもつイメージを崩してしまうのは本末転倒だと思います。天然染料らしい色味だったり、手仕事が醸し出す雰囲気だったりすることと “生産性” や “経済性” を両立させるのは非常に難しい課題です。
この両立しずらい問題を解決するためのヒントとなったのが、とある博物館で見た “明治時代の機械” です。「殖産興業」をスローガンに産業の近代化を推し進めた明治日本――。その勇ましい旗幟とは逆に、生まれたばかりの産業機械は、とても素朴で「道具から機械への発展途上」にある存在だったように感じます。特に、繊維産業にかかわる機械が、その人間ぽい動きから生み出す製品は、私たちの課題である “生産性” や “経済性(コスト)” 、そして求める“品質”とのバランスがとれているように思います。
ひとつ屋では、そんな古い機械を集めては修復し、復元しては物づくりをしています。


◆ 資源について考える

ひとつ屋では染織農園や里山から採れる植物を使って染め物をしたり、織り物をしたりしています。人々が長い時間をかけて培った伝統的な技で加工し、材料も、道具も、エネルギーも、そのすべてが最終的には自然に返る製品づくりを目指しています。ところが、現代の物づくりは、それだけでは無理があります。

私たちも電気やガスや水道水、石油やビニールを使うことがありますが、それを減らしながらも否定せず、“バランスの取れた物づくり” そして “持続的な物づくり” を目指しています。


◆ これからの ひとつ屋

現在、ひとつ屋で作られた製品は、リアルショップ(大阪市阿倍野区)をはじめ、各国内ECサイトで販売しています。また、大阪・阿倍野、三重・伊賀の二つの工房で、私たちの物づくりを体験していただけるワークショップも開催しています。
今後は広く海外にも目を向け、たくさんの人と交流し、新しい考え方を取り入れていきたいと思っています。


以上のことを大切にしながら、ひとつ屋では物づくりに取り組んでいます。
今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。