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蚕が繭を作るまで

ひとつ屋シルク

草木染工房 ひとつ屋のシルクは、蚕を育てる養蚕の工程から見つめ直した天然素材です。本ページでは、蚕が繭をつくるまでの過程と、そこから生まれる天然シルクの特徴、そして草木染との関係について記録します。素材の背景を知ることは、布の手ざわりを知ることでもあります。

天然シルクの特徴

天然シルクは、細くしなやかな繊維でありながら、強度と弾力をあわせ持つ素材です。吸湿性と放湿性に優れ、肌に触れたときのやわらかな感触と上品な光沢が特長です。繊維表面がなめらかであるため、光を穏やかに反射し、化学繊維にはない自然な艶を生み出します。また、動物性たんぱく質から成るため、人の肌との相性がよい素材としても知られています。


草木染との関係

シルクはたんぱく質繊維であるため、天然染料との相性がよく、草木染においても繊細で深みのある色を引き出します。染料が繊維内部にゆっくりと浸透することで、発色に透明感と奥行きが生まれます。藍(生葉)や茜、紅花などの植物染料は、シルクの光沢と重なり合い、色に立体感を与えます。素材そのものが持つ質感が、染色の結果を左右する──その関係性こそが、天然素材を扱う面白さでもあります。


蚕が繭を作るまで

▼ 蚕種社(蚕の卵を販売する会社)から届いた蚕の卵。近年、気温が高いせいで予定より早く孵化することが多い。下の写真は、卵から孵化したばかりの「毛蚕(けご)」といわれる蚕。

▼ 数日後、まるで蟻のような姿になるので、この時期の蚕を「蟻蚕(ぎさん)」という。

▼ 翌日、蚕を「蚕座(さんざ)」に移しました。

※「蚕座」とは蚕を育てるためのスペース。蚕の成長とともに蚕座を広げていく必要があり、これを「拡座」という。

▼ 次第に蚕らしい色(白)になっていく。

「眠(みん)」の状態。

※「眠」とは脱皮の半日前くらいから桑葉を食べなくなり、上半身を上げて動かなくなる状態をいう。

▼ このとき、防乾紙を取り除き、脱皮をそろえて乾燥と消毒のために石灰をまく。

▼ 孵化から5日目(2令)の状態。眠あけがほぼそろったので、網掛けと給桑(餌となる桑を与えること)する。

▼ 蚕座の下に敷いた網を定期的に持ち上げて下に落ちた食べ残しの餌や糞を掃除する。これを「除沙(じょしゃ)」という。

▼ 下に落ちた食べ残しや糞に蚕が紛れていないかを丁寧に確認。死んでしまった蚕がいれば、ウイルスなどの病原菌を広げないために石灰の中に入れて処分する。

▼ 7日目、蚕が大きくなり、少し密になったので再び「拡座」する。清潔な箸を使い、蚕を傷つけないように慎重に飼育スペースを広げる。

▼ 「拡座」の後は「給桑」。

▼ その後、予定どおり、2回目の「眠」に入った。

▼ 「眠」が明け、「3令」が始まった。

▼ その後、網をかけ、さらに「拡座」して「給桑」。与える桑の量が最初の6倍になった。とても順調に育っている。

▼ 11日目、早朝に「除沙」のあと、「拡座」をして「給桑」する。

ひとつ屋シルク
ひとつ屋シルク

▼ 13日目。脱皮して「4令」。

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昨夜は激しい雨が降りました。猛暑が続いていたので心配していましたが、雨で気温が少し下がったので、蚕たちの食欲が旺盛です。豪雨のなかで桑を摘んだかいがあったというものです(笑)。最近は、24時間で1cmほど大きくなり、順調に成長しています。今日が4令の4日目になるので、そろそろ次の眠(脱皮準備)に入るころだろうと気にしながら給桑しています。というのも、食べ残しがあると不衛生になるからです。蚕の生長を見ているのが楽しくて仕方ありません!

▼ 15日目。そろそろ「眠」に入りそう。

▼ 16日目(4令5日目)。夕方、「眠」に入った。とても順調に成長している。すっかり蚕らしくなった。

▼ 同日の夜、よく眠っているので石灰をまいた。これは消毒と同時に、先に起きた蚕が桑を食べないようにするためである。養蚕では成長をそろえることを大切にしている。

▼ 17日目。みんなよく寝ている。

▼ その夜、チラホラと脱皮を始めた。

▼ 18日目(5令、1日目)。無事に4回目の脱皮が終わり、「除沙」して「給桑」する。

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19日目。「白きょう病」が発生し、数匹(数頭)が死んだ。秋だというのに酷暑が続いたうえに湿度が高い環境が悪かったのだろう。「蚕座」を広げて「給桑」の量を減らし、扇風機を2台回して対処する。

※「白きょう病」とは、蚕の病気でカビが寄生することで発生する。「白きょう病」になった蚕は死に、放っておくとカビの胞子が拡散して病気が広がる。

▼ 「白きょう病」で死んだ蚕。

▼ 広げて風通しをよくした「蚕座」。

▼ 20日目(5令3日目)。蒸れが解消されたので「白きょう病」も収まった。

▼ 蚕が随分と大きくなったので「蚕座」を2段にした。

▼ 21日目。病気も発生せず、とても順調だ。

▼ 22日目。今日も順調。蚕はマッチ箱くらいの大きさになった。

▼ 23日目。変わらず順調。

▼ 24日目。日に日に大きくなる。

▼ 26日目。ようやく「熟蚕(じゅくさん)」の香りがする。それを何と表現すればいいのか⋯、ちょっと甘いような香りだ。

※「熟蚕」とは、蚕が充分に成長し、繭を作りはじめる状態のこと。

▼ 27日目。最後の網掛けと「除沙」の日。蚕の脚先が少し透けてきた。いよいよ、繭(まゆ)づくりが始まる。

▼ 同日の夜。繭づくりを始めた蚕がいる。さぁ、頑張れ!

▼ 32日目。充分に成熟した蚕が繭を作るための足場(蔟(まぶし))を入れてから6日目。ほとんどすべての蚕が繭を作った。

▼ 10月9日、蚕を育て始めてから35日目(「上蔟(じょうぞく)」から9日目)、ついに!繭の収穫(収繭)です。

※「上蔟」とは、蚕に繭を作らせるために蔟に移し入れること。

▼ 収穫したばかりの繭。まだ「繭毛羽」を取り除いていない状態。

※「繭毛羽」とは、蚕が繭を作るときに繭を固定するために蔟との間に吐いた糸のこと。生糸にはならないため取り除くが、これも捨てることなく利用する。

▼ 繭毛羽を取り除いた繭。本当に美しい!

 繭毛羽を取り除いた繭。本当に美しい!

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笹に覆われた放棄耕作地を再耕して養蚕の準備を始めたのは2018年(当時のブログ『伊賀工房のはじまり』をご覧ください)。無謀な取り組みは、本当に“右往左往”と“試行錯誤”の連続です。今も生産量は少ないし、たくさんの問題点もあります。これからも、小規模ながらのメリットをいかした“古い時代の養蚕”にチャレンジしたいと思っています。
これからのひとつ屋を楽しみにしていてください!