草木染で表現する色のなかで最も好きなのが、桜を使って染める、文字どおりの“桜色”です。化学染料では出ない、わずかに灰色がかった色は、ピンクでも桃色でもない、まさに桜色。それは、これぞ!! “日本の色”という気品を感じさせてくれますが、桜でこの色を染め出すには、大変な時間と労を要します。
▼ 桜で染めたコットンのスカーフです。
まず、最も大きな問題が桜が手に入らないということです。桜で染料を作る場合、必要になるのが樹皮のついた小枝なのですが、「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」といわれうように、めったに桜を切ることがありません。今回は母の実家で剪定されたものを使いました。
これを細かく切って、小さな火で炊き続けます。来る日も来る日も――。冷ましては炊き、炊いては冷ますを繰り返します。ここでのポイントは、染料となる煮汁が濁らないようにすること。そのためには煮立たせず、丁寧に灰汁を取り除くことです。
こうしてできた煮汁を1年以上、熟成させます。ひとつ屋の場合はペットボトルに入れてから、冷暗所で寝かせておきます。すると、その底にワインの澱(おり)のような沈殿物ができますが、これが入らないようにして鍋に移して加熱し、下処理しておいた布を浸して染めていきます。
これをさらに、媒染によって発色させ、色を定着させます。今回はミョウバンとアルミ(最初の写真の上下がミョウバン、真ん中がアルミ)による媒染をしました。が、なかなか思うような色にならないんですよねぇ。
▼ 媒染中です。
以上が、桜の枝からピンクの布を染めるまでの大まかな手順で、さらに染めた布を1年ほど熟成させると、ほんとッ!! きれいな桜色になります。ということで、完成は一年後――。でも、やっぱり天然染料は素晴らしい色です。この夏は、草木染を頑張ってみようと思っています。