カテゴリー: ブログ

ひとつ屋の日々の仕事や判断、その背景にある考えを、いくつかのカテゴリーに分けて記録しています。畑で植物を育て、染め、織り、道具を整え、作り続ける。その過程で起きた迷いや選択を、現場の視点から綴っています。完成品だけでなく、そこに至るまでの時間や思考も含めて残す記録です。

  • 耳成山(みみなしやま)

    耳成山(みみなしやま)

    大阪から伊賀へ向かう列車の窓から、奈良盆地に静かに佇む「耳成山(みみなしやま)」が見えます。

    その名の由来には諸説があります。
    山の形が左右対称で “耳が整っている” ように見えるからとも、古代には「耳」が “境” を意味したからともいわれています。

    古くは『万葉集』にも登場し、香具山(かぐやま)や畝傍山(うねびやま)とともに「大和三山(やまとさんざん)」に数えられ、1967年に歴史的風土保存区域に、2005年には国の名勝に指定されています。

    古代から日本人の心に生きた山といえるでしょう。

    やわらかな緑に包まれたその姿は、どこか人の気配を感じさせ、過ぎゆく季節の光を映しています。

    車窓からその稜線を眺めるたび、遠い昔と今が穏やかに重なり合う――そんな不思議な時間が流れます。

  • 陸稲の畑で、自然に教えられること

    陸稲の畑で、自然に教えられること

    秋の光が柔らかくなりはじめるころ、畑の稲が色づき始めました。
    ここは田んぼではなく“畑”。水を張らずに育てる「陸稲(おかぼ)」を栽培しています。
    風に揺れる稲の姿は、どこか控えめで、それでいて誇らしげ。
    自然の中に立つその姿を見ていると “人が手を貸す” というより “自然に手を添えさせてもらう” という感覚になります。
    ※以前のブログ『陸稲』もご覧ください。

    昨年は「もち米」の陸稲を育てました。天候にも恵まれ、予想以上の実りをいただきました。その成功に気をよくして、今年は「うるち米」に挑戦!「どうせ育てるなら、ご飯のお米を」と、少しばかり欲が顔を出したのです。
    けれど、自然はそんな心の揺れを静かに映し返す鏡のよう。猛暑と雨不足が重なり、稲は思うように伸びず、実りもまばらでした。結果は「大失敗」。でも、それもまた畑が教えてくれることのひとつです。

    刈り取りの日。鎌を入れるたびに、稲の香りがふわりと立ちのぼります。豊かでなくとも、確かに実りはありました。倒れかけた稲を束ね、整然と並べていく作業は、まるで自分の心を整えるようでもあります。
    「うまくいかない年もある」――そう受け入れることで、人はまた一歩、自然に近づけるのかもしれません。

    稲を手に取ると、陽を含んだ穂が柔らかく光ります。ひと粒ひと粒に、夏の日々の記憶が宿っているようで、「よくここまで」と声をかけたくなります。
    自然は“報酬”を約束してくれませんが、“気づき”をくれます。それが、畑を続ける理由なのかもしれません。

    刈った稲は、今こうして納屋の天井に吊るされています。風が通るたびに、カサカサと小さな音を立てて揺れます。その音を聞いていると、不思議と心が落ち着きます。
    来年はまた「もち米」に戻そうと思います。
    身の丈に合った方法で、無理せず、自然の流れに身をゆだねてみよう—。人が自然を育てるのではなく、自然が人を育ててくれる――そんな当たり前のことを、改めて教えられた一年でした。

  • ボールワームとの闘い ―― 秋の学び

    ボールワームとの闘い ―― 秋の学び

    今年も「緑綿(りょくめん)」は、順調に育ち、たくさんの実をつけてくれました。けれども、中にはぽっかりと穴のあいた実も—。
    ※ ひとつ屋での「緑綿栽培」については、以前のブログ『緑綿(りょくめん)製品の開発』をご覧ください。

    ボールワームとの闘い ― 秋の学び

    調べてみると、これは “ボールワーム” という虫の仕業でした。ちなみに、ボールワームとは、綿の実(ボール)の中に入り込んで、種や綿の部分を食べてしまう小さな幼虫のこと。名前のとおり “綿のボールに入る虫” という意味です。

    幸い、被害は一部の実だけでしたが、中を開けてみるとグチャグチャの茶褐色で、やはりショックでした。

    ボールワームとの闘い ― 秋の学び

    それでも、これも自然と向き合っているからこその経験。来年は、虫が近づかないように天然素材の「忌避剤」を使ってみようと思います。ハーブ系や木酢液など、植物にやさしい方法を試して、できるだけ自然なかたちで守ってあげたいです。

    悔しさの中にも学びがありました。自然と共に育てる楽しさと難しさを、またひとつ感じた秋の一日でした。

  • 刷り込み刷毛がどっさり!

    刷り込み刷毛がどっさり!

    染めの仕事に欠かせない道具のひとつ「刷り込み刷毛(すりこみばけ)」

    このたび、某オークションで思わず“箱いっぱい”落札してしまいました(笑)。
    届いた箱を開けてみると、大小さまざまな刷毛がどっさり。新品とはいかないまでも、まだまだ現役で活躍してくれそうなものばかりです。

    どっさりの刷り込み刷毛!

    これだけあれば、しばらくは安心。いや、それ以上に!「これだけあるんだから、頑張っていっぱい作品を作らなくちゃ!」という気持ちの方が強くなります。

    道具との出合いもまた、創作の原動力。次はどんな布を染めようか、どんな色を生み出そうか—。
    新しい刷毛たちを眺めながら、わくわくが止まりません。

  • 秋の空を見上げて

    秋の空を見上げて

    雲ひとつない青空。
    その下で、木々は少しずつ色を変えはじめています。
    緑の中にほんのりと混ざる茶や黄が、季節の移ろいを静かに知らせてくれる――そんな穏やかな午後。

    風が通り抜けるたび、葉の間からこぼれる光がきらりと揺れて、時間までゆっくり流れていくようです。
    忙しい毎日の中で、ふと立ち止まって空を見上げるだけで、心がすっと軽くなります。