カテゴリー: 物づくり紀行

今も、物づくりやデザインの発想を得るため、また自らの感性を確かめ、育てるために、各地を訪ねています。そうした旅の途中で出会った風景や土地の気配、人の営みを綴った紀行文が「物づくり紀行」です。ひとつ屋主催の「壱つ屋染太郎」が、制作の背景にある時間として、各地で感じたことを書き残しています。

  • 住吉市戎大國社

    住吉市戎大國社

    商売繁昌の神様

    江戸の昔から商都として栄えた大阪。そんな町で生まれ育った者にとって、大切な年中行事のひとつが「えべっさん」の参拝です。大阪では今宮戎(いまみやえびす)神社や堀川戎(ほりかわえびす)神社が有名で、お隣の県(兵庫県)には戎神社の総本社の西宮(にしのみや)神社もありますが、私の家では住吉大社にある住吉市戎大國社(すみよしいちえびすだいこくしゃ)を参拝しています。というのも、住吉の「えびす祭」のなんとも素朴な雰囲気で大好きなんです。
    ちなみに、下の社印の奥に写っている小さな社の向かって左に事代主命(えびす様)、右に大国主命(だいこく様)です。

    今年は春に、ひとつ屋のリニューアルオープンを予定しているので、いつもの年に増して念入りに祈願してきました。

    ものづくり紀行

    でもって、帰りにはこんなものをいただきながら寒さをしのぎました。今年も忙しいながらも良い年になりそうです!

     

  • 岐阜大仏

    岐阜大仏

    先日、母の実家に用事があって岐阜県下呂市へ行ってきました。その帰りに岐阜市にある正法寺(しょうほうじ)に立ち寄りました。ここには日本三大大仏に数えられる大きな仏様(釈迦如来像)が安置されています。

    岐阜大仏

    この大仏が作られたのは天保3年(1832年)のこと。別名「籠大仏(かごだいぶつ)」と呼ばれるとおり、この仏様は木と竹材で籠のような骨組みを作り、その上に粘土を塗り、和紙を貼ってできています。庶民の力を集めて造られた大仏は、完成までに38年の歳月を要したそうです。石でも木でも、金銅でもない、木と竹と土と和紙でできた大仏—、私はそんな素朴な大仏が大好きで、今回で3度目のお参りとなります。

    初めてこの大仏さまと出会ったのは今から30年ほど前のこと。若い私には古めかしい仏像にしか見えなかったが、10年ほど前に見たときには、その穏やかな雰囲気に感動できるようになりました。

    そして今回、“芸術” とは違った“民芸” の美しさをたたえる素朴な大仏様に、自分の物づくりにおいても大切にしたいものを感じました。

    岐阜大仏

    大きな体を少し窮屈そうに身をかがめて迎えてくださる仏さま――。訪れた者を包み込むようなその柔和な姿に心惹かれます。10年後、20年後、またここに来たいと思います。

  • だいがく祭と勝間木綿

    だいがく祭と勝間木綿

    私の暮す地域では、7月24日、25日に夏祭りが催されます。かつて、この辺りは「勝間(こつま)木綿」と呼ばれた綿花の産地であったそうです。今ではすっかり都会になって、勝間木綿も失われてしまいましたが、この夏祭りだけが、ここが農村だったことを今に伝えてくれています。

    高さ20mもの柱に70個の提灯を飾りつけた「だいがく」と呼ばれる櫓(やぐら)は、たわわに実った農作物を提灯があらわし、上部に取り付けられた数多くの鈴が雷や雨をあらわしているそうです。つまりは、豊作と雨を願う素朴な農民の祭りだったというわけです。

    そういえば、ちょうど木に綿が実っているかのようです。木綿の産地のこと、もしかしたら綿花の豊作そのものをあらわしているのかもしれません。

    かつて、このほかにも同様の「だいがく」があったらしいのですが、この一基を残して戦災で失われたそうです。

    今、栽培している和綿は勝間木綿ではありませんが、連日の猛暑で少し元気がないように思うので、この神事に私も雨と豊作を祈願しました。

  • 京都・蚕ノ社

    京都・蚕ノ社

    早いもので平成30年が明けて、もう2カ月が過ぎようとしています。が、今年の正月は親戚まわりが続き、いまだに初詣に行くことができていないままです。そこで、あえて旧歴の正月(2月16日)を待って初詣することにしました。

    というのも、草木染(染織)の作業は旧暦で行うのがよいと聞いたことがあります。そういえば「立春」や「半夏生(はんげしょう)」「八十八夜」「二百十日」など、旧暦や節気に基づいた日の前後にタネをまいたり、収穫したり—などの作業が多いように思います。

    去年から頑張ってきた工房のDIYリノベーションも終わり、今年は草木染を頑張りたい!と思っていたので、まずは養蚕や染織の神様でもある京都の「蚕ノ社(かいこのやしろ)」にお参りすることにしました。

    ▼ 「蚕ノ社」と呼ばれる木嶋坐天照御魂神社
    京都・蚕ノ社(かいこのやしろ)

    京都・蚕ノ社(かいこのやしろ)

    京都・蚕ノ社(かいこのやしろ)

    私にとっては、初詣であり、染織の神様でもあり––と、今日の「蚕ノ社」は特別ですが、祭礼でもないこの日は、お参りする人もまばらで、とても神秘的な雰囲気に包まれていました。

    神様に “染織に精進すること” を心より誓ってまいりました!

     

  • 近代製糸以前の素朴な糸

    近代製糸以前の素朴な糸

    絹について学びたくて、長野県に点在するシルクに関する博物館を巡ってきました。予約もなしに突然の訪問にもかかわらず、どの館でも非常に丁寧に展示品や製糸、養蚕についてご説明くださいました。

    岡谷蚕糸博物館

    ▼ 糸取りの実演

    なかでも非常に興味深かったのが、製糸に関するもので、上州式座繰機や諏訪式座繰機で糸取り(繰糸)の体験をさせていただいたことは、非常によい勉強になりました。

    さらに興味をひいたのが、上州式や諏訪式の座繰りが登場する以前の糸取りの方法でした。繭から糸を手で引き出す「手引き」をはじめ、繭を引き延ばすようにして糸を取る「ずり出し」など、近代製糸以前から行われていた素朴な方法でとられた糸にとても興味をもちました。

    こうしてさまざまな技法でつくられた糸を見ていると、糸の作り方に正解や間違いがあるのではなく、自分が思う糸を作れることが最も大切なんだなと感じさせられました。

    ひとつ屋では、近代製糸以前の素朴な糸を作ろうと思っています。それにはまだまだ勉強が必要です。