前回のブログ 『天然顔料によるロウケツ染め』の後編です。
話が前後しますが、まず “天然顔料” を簡単にいうと、色のついた “土” や “泥” のことです。地球上には、火山の活動や水の流れ、動植物の営みによって、さまざまな色の土や岩(鉱物)が生み出されます。これを粉砕したのが天然顔料で、日本画で使われる岩絵具(いわえのぐ)やベンガラも、そうしたものの一つです。
ところが天然顔料は、それそのものでは何にも定着しません。例えば、神社の鳥居が赤いのは、古くは赤い土顔料(弁柄)を塗ったからなのですが、このときにも顔料だけでは直ぐに剥がれ落ちてしまうので、柿渋や油などに溶いて塗り重ねて定着させていました。
しかし、布(衣服)に顔料を染めつけるのに、柿渋や油では着心地が悪くなってしまいます。そこで先人たちは、布に対する固着剤(バインダー)として、動植物から得たタンパク質を用いました。
時代や場所によっては、このタンパク質を動物の血や乳などの体液から得たようですが、それでは入手が困難だろうし、保存性が悪いうえに、作業中の匂いも気になったでしょう。そこで、染色の分野では古くから大豆の絞り汁である呉汁(ごじる)を用いてきました。ちなみに、今回使っている土顔料には固着剤(バインダー)にアラビアガムに似たものが使われているそうです。
かなりウンチクが長くなりましたが、このことを頭に置いて、作業の続きです。
▼ 前回までに「堰出し」と「ロウ伏せ」をし、地染めをしています。
▼ これを乾燥させてからロウを落とす「脱蝋(だつろう)」をします。※定着剤が効きが弱いので脱蝋は、できる限り短時間で行います。
▼ 「脱蝋」を無事に終え、乾燥させてから呉汁を塗り、再び乾燥させて蒸し器で蒸します。
▼ 天然染料だけとは思えないほど、いい感じに染まりました。
今回の「天然顔料によるロウケツ染め」は実験的な試みで、随分と手間がかかりました。が、比較的に堅牢度も高く、今後さまざまなデザインに応用できそうです。さらに改良して、いろんな表現に挑戦していこうと思っています。
どうぞ、今後をお楽しみにッ!!