◆ 持続可能な物づくりへの取り組み
私たちの製品は、染織にかかわる植物ばかりを栽培する 【ひとつ屋染織農園】と、その周辺の里山から得た恵みで作られています。可能な限り伝統的な農法で植物を栽培し、里山の維持管理で出た雑木や竹を燃料にして “持続可能な物づくり ” を行っています。そのコンセプトは “一つひとつの作業や工程を丁寧にする” こと。この “一つひとつ” へのこだわりが「ひとつ屋」の名の由来です。このページでは、そんな私たちの物づくり風景を紹介します。
物づくりの舞台
ひとつ屋の伊賀工房(三重県)。今も日本の原風景が残るこの地で、私たちは里山の自然に包まれながら物づくりに励んでいます。
ひとつ屋染織農園
後継者不足と高齢化で一度は打ち捨てられた耕作地。生い茂ったススキや笹竹を刈り、その根を取り除く作業は “再生” というより “開墾” に近い重労働です。こうして再生した畑に、私たちは藍や綿のタネをまき、桑の苗木を植えて染織にかかわる植物ばかりを栽培する【ひとつ屋染織農園】を運営しています
▼ 放棄耕作地の再生。一面を覆いつくす笹竹を刈るところから作業は始まりました。
▼ 再生した耕作地で最初に栽培を始めたのが綿(和綿)です。
▼ 最初の年は合計で2キロほどの綿を収穫しました。
ひとつ屋では収穫した綿を「綿繰り」し、ふとん店で「綿打ち(製綿)」をしてもらってから明治時代の紡績機「ガラ紡(復元機)」で糸にします。さらに、これを「草木染」し、「手織り」や「縫製」の作業を経て、ようやく製品になります。
▼ 明治時代の紡績機「ガラ紡(復元機)」は、手紡ぎと同じ機構なので、とても柔らかな糸を紡ぐことができます。詳しくは『ひとつ屋に「ガラ紡」がやってきました!』をご覧ください。
▼ もちろん、収穫した綿を手紡ぎして製品を作ることもあります。これは日本の伝統的な糸車です。
ひとつ屋シルク
これまで試験的に続けてきた養蚕も、2023年度からは本格的にスタートすることになりました。放棄耕作地を再生し、桑を栽培するところから始めた国産シルクづくり――。ひとつ屋では、近代以前の製法で素朴な絹製品を作ることを目指しています。
▼ 【ひとつ屋染織農園】に植えたばかりの桑。詳しくは『ひとつ屋シルク』をご覧ください。
▼ 桑の生長を待って始めたのが養蚕です。詳しくは『ひとつ屋シルク「蚕が繭を作るまで」編』をご覧ください。
▼ ひとつ屋で収穫した繭。
▼ ひとつ屋では、いくつかの方法で繭を糸にしていきます。これは「座繰り」です。
▼ これは「紡ぎ」です。詳しくは『ひとつ屋シルク「繭が糸になるまで(紡ぎ)」編』をご覧ください。
▼ こうしてできた糸でショールなどに織って製品となります。詳しくは『自分たちのシルクが真っ当な製品になるのか』をご覧ください。
その他
このほかにも【ひとつ屋染織農園】では、藍や日本茜、苅安や小鮒草など、さまざまな染料植物(草木染のための植物)の栽培をはじめ、苧麻や葛、桑、楮を用いた “古代布” の再生にも取り組んでいます。
▼ 日本茜(ニホンアカネ)の収穫。
▼ 里山で集め、栽培している苧麻。詳しくは【ひとつ屋 古代布研究所】をご覧ください。
エネルギー
草木染をしたり、糸を作ったり—と、ひとつ屋の物づくりには多くの水や熱源(エネルギー)が必要となります。もちろん、私たちも電気やガスや水道水、石油やビニールを使うことがありますが、それを減らしながらも否定せず、“バランスの取れた物づくり” そして “持続的な物づくり” を目指しています。
▼ 多くの水やエネルギーを必要とする草木染。特に、浸染では里山の雑木や放棄竹林の竹を熱源にした三連の竈(かまど)を使用して製品を染めています。
▼ 里山を保全するために出た雑木や放棄竹林の竹をエネルギー(熱源)にしています。
▼ 庭の片隅にある古井戸。再生して畑の水やりや物づくりに使用したいと考えています(2024年3月現在)。
ひとつ屋の思い
上記のように、ひとつ屋では染織農園や里山から採れる植物を使って染め物をしたり、織り物をしたりしています。人々が長い時間をかけて培った伝統的な技で加工し、材料も、道具も、エネルギーも、そのすべてが最終的には自然に返る製品づくりを目指しています。そして、こうしてできたものを “日常的なアイテム” として展開したいと考えています。
今後、ひとつ屋では製作工程を報告したり、広く新たな情報を集めたり、またワークショップを開催したりする予定です。
なにとぞ、ひとつ屋をよろしくお願い申し上げます。