カテゴリー: 染太郎日記

ひとつ屋の主催「壱つ屋染太郎」が、畑や工房、暮らしの中で感じたことを、そのまま書き留めています。結論や答えよりも、その時々の気持ちや揺れを大切にした、徒然なる日々の記録です。嬉しいことも、悲しいことも、しんどいことも、日々の中でふと浮かんだ疑問も—。そうした個人的な思いを綴ってきたのが「染太郎日記」です。

  • 変化の年

    変化の年

    この春に父の十三回忌がありました。思い起こせば、すでに意識がない父に付き添いながらいると、大きな病院がゆらゆらと揺れたのを思い出します。それが東日本大震災の当日のこと。それまでに仕事上の人間関係と連日の徹夜で疲れ切っていた私は、自分の体調不良のせいで周囲が揺れて見えていると思ったほど、ここ大阪でも揺れました。

    その数日後に父はなくなり、私も仕事をやめることにしました――。大きな喪失感と体調不良のなか、何も考えることができず、ただ漠然とした日々を過ごしていました。

    そんな状態がどれくらい続いたでしょうか。ふらっと立ち寄った園芸店で、小さなサボテン(多肉植物)を見つけました。毎日の水やりもなく、花を咲かすこともなく、目を見張って生長することもないサボテンは、そのときの自分に重なって見えたほどでした。

    ▼ 当時のサボテン
    変化の年

    あれから月日は流れ、今年はあのときと同じ“兎年”です。小さなカップに入って売られていたサボテンも、今は5倍以上の大きさになり、 毎年 小さな花を咲かせるようになりました。

    名前さえも知らないサボテン。水やりもなく、花を咲かすこともなく、目を見張って生長することもないはずだったのに、生きてるんですねぇ。当たり前のことだけど――。

    人は12年もたてば、見た目にも、周囲の環境も、心持ちも変わるのに、“習慣を変える”ことははとても難しいことになってしまいます。サボテンのように、目に見えないほどの生長を続けていたいものですが、なかなかそうはいきません。

    今日から新年度です。また何かを決断して変わっていかなければならないような気がしています。

     

  • 供養

    供養

    僕にとって百貨店といえば「なんば高島屋」です。子供のころ、父に手を引かれ、よく行った場所で、オモチャ売り場や屋上の遊園地へ連れて行ってもらうのが何よりの楽しみでした。その帰りには「花月(NGKではなく、なんば花月劇場)」で漫才を見てから、向かいの店で焼き鳥でも食べるのが常。そこで、ビール片手の父に、さっき買ったばかりのオモチャを開けてもらうのが待ち遠しいものでした。
    父との二人だけの時間――。あれから50年近い月日が流れ、この週末には父の十三回忌があります。

    昨日は久しぶりに高島屋にやってきました。父が生まれた年に建てられた屋加島屋。今も変わらない品格に父のことが思い出されます。

  • 感動と驚き

    感動と驚き

    歳をとると頭が固くなります――。そうならないようにとは思うのですが、どうしても経験値が邪魔をしてしまいます。歳をとること自体は肯定的に受け止められるのですが、物づくりの発想が凝り固まるのには不安を感じます。
    そこで、最近は脳に刺激を与えるため、今までは縁遠かった舞台芸術や音楽鑑賞に努めています。
    先日も、学生のとき以来の“演奏会”に誘っていただきました。荘厳な雰囲気の会場、緊張感が漂う空気、そして迫力ある生の演奏など、その一つ一つにとても感動しました。鳥肌が立つという感覚を久しぶりに覚えたほどです。


    そして何より、今まで自分の中にあった音楽に対する固定観念が、この歳になって変化したのには驚きです。
    とはいえ、まだまだ忙しい毎日――、なかなか思うように時間をとることができませんが、これから少しずつでもこうした感動や驚きを積み重ねようと思います。

  • 坂東玉三郎×鼓童 初春特別公演 『幽玄』

    坂東玉三郎×鼓童 初春特別公演 『幽玄』

    ずっと以前から「いつの日か(死ぬまでに)実物を見てみたい!」と思っていたのが坂東玉三郎さんです。私にとっての魅力を語ればキリがないのですが、ひと言でいうなら「ものづくりに対する姿勢」にとても深い感銘を受けるからです。インターネットで何でも見れる時代なので、映像では拝見しているのですが、なかなか舞台を見る機会がありませんでした。

    そんな思いを口にしていると、義母の計らいで『坂東玉三郎×鼓童 初春特別公演 『幽玄』を見せていただける機会を与えていただけました。

    坂東玉三郎×鼓童 初春特別公演 『幽玄』

    坂東玉三郎×鼓童 初春特別公演 『幽玄』

    数十年に一度という大寒波のなか、やってきたのは大阪・松竹座。まだ新春ムードが漂う劇場の雰囲気に、年甲斐もなく開演前からかなりハイテンション。今か今かと胸が高鳴るなか、いよいよ開演です――。

    坂東玉三郎×鼓童 初春特別公演 『幽玄』

    舞台は初めから期待どおりの“作り込まれたもの”で、幕間も含めて2時間ほどの公演でした。あれよあれよという間に時間が過ぎ、凝縮された内容はまさに圧巻でした。幕が下されたあとも、しばらくは冷めやらぬ余韻のなかにいたほどです。

    とにかく感動しました。出演者の所作や奏でられる楽器の音色はもちろんのこと、舞台装置や衣装、そして化粧の匂いまでが感じられ、その世界観に引き込まれていきます。

    下町で粗野に育った身にとって、芝居見物は敷居が高く、どこかで「自分のような人間には無縁だ」と捻くれていました。それが、今回は“無邪気”といえるほどに楽しめたことに自分自身でも驚きです。感謝です。

  • 丁寧に暮らしていきたい。

    丁寧に暮らしていきたい。

    「年賀状じまい」なんていう言葉のある時代ですが、今年もその準備をしました。親類や友人、受講生さんや取引先など、総勢200枚近く――。といっても、ほとんどが印刷です。それでも、デザインを凝らしたり、ひと言を書き添えたり—と、何らかの工夫をしながら、ひとり一人の顔を思い浮かべて作業しました。合理性ばかりが求められる世知辛い世の中なので、このくらいのことは、もう少し続けようと思っています。届くのを楽しみにしていてください!