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『あべのハルカス 三十六景』 第十四景 「松虫塚」

葛飾北斎の『富嶽三十六景』にちなんで始めた『あべのハルカス 三十六景』。第十四景となる今回は、工房のほど近くにある史跡「松虫塚(まつむしづか)」から見たハルカスです。

『あべのハルカス 三十六景』 第十四景 「松虫塚」

塚の横を通る道を「松虫通り」といい、近くには「松虫」という駅もあるほど、「松虫」という言葉が日常的に使われているにもかかわらず、その名の由来となった「松虫塚」が当地に存在する理由は定かではないそうです。

▼「松虫塚」です。
『あべのハルカス 三十六景』 第十四景 「松虫塚」

少し詳しく調べてみると、美しい声で鳴きながら短い命を燃やす鈴虫(松虫)を哀れに思い、旅人が塚を建てたという説があったり、後鳥羽上皇に仕えた松虫と鈴虫の二人の女官が、法然上人が土佐に流されたのち、当地に隠棲したからという説があったり、さらには、昔むかし、ある人が友と二人で阿倍野の松原を通ったとき、その一人が麗しく鳴く鈴虫(松虫)の声に誘われるように草むらに入り、それを心配した友が捜しに行くと草のしとねに伏して亡くなっていたらしく、これを泣く泣く葬った塚であるなどと、さまざまな説があるようです。

どの話にも “無常” のようなものが感じられると同時に、静けさと一抹の寂しさ、そして少しの不気味ささえ感じます。

湿気の多い夏の夜空を照らして聳え立つ「あべのハルカス」――。雲にまでに届く照明は、松虫塚の印象とは異なり、まるで “バベルの塔” のようです。

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