2018年の夏から三重県伊賀市に農地と古民家を購入し、本格的に染織植物を栽培を始めた「ひとつ屋染織農園」。
当初は栽培面積も狭く、さまざまな染織植物の栽培を試験的に続けていましたが、2022年ごろからは放棄耕作地を貸していただいて本格的な栽培を始めています。このページでは、ひとつ屋染織農園で栽培している植物を紹介しています。
放棄耕作地の再生
最初に取り組んだのが放棄耕作地の再生です。後継者不足と高齢化で一度は打ち捨てられた耕作地にはススキや笹竹が生い茂り、これを再生するには雑草を刈り、その根を取り除く作業から始めるのですが、それは “再生” というより、もはや “開墾” に近い重労働です。こうして再び畑として使えるようになった場所に、私たちは藍や綿のタネをまき、桑の苗木を植えて染織にかかわる植物ばかりを栽培する【ひとつ屋染織農園】を始めました。
※ 詳しくは『放棄耕作地を畑に戻す vol.1』をご覧ください。
▼ 放棄耕作地の再生。一面を覆いつくす笹竹を刈るところから作業は始まりました。
桑の栽培
こうして再生した畑に、まず植えたのが養蚕用の桑でした。以後、試験的に続けてきた養蚕も、2023年度からは本格的にスタートすることになりました。放棄耕作地を再生し、桑を栽培するところから始めた国産シルクづくり――。ひとつ屋では、近代以前の製法で素朴な絹製品を作ることを目指しています。
※ ひとつ屋の養蚕事業に関しては『ひとつ屋シルク』をご覧ください。
▼ 苗木を植えたばかりの桑畑。
▼ 2024年7月の桑畑。
▼ 現在、年に2回の養蚕を行っています。
▼ 収獲した繭。
和綿の栽培
ひとつ屋染織農園では、養蚕のための桑の栽培と並行して開園当初から和綿(三河木綿)の栽培をしています。現在、明治時代に日本で発明された「ガラ紡」による糸づくり、さらには、その糸を用いた製品づくりに注力しています。
※ 「ガラ紡」に関しては『ひとつ屋に「ガラ紡」がやってきました!』をご覧ください。
※ 「ガラ紡糸」に関しては『ガラ紡糸(手紡ぎ風糸)』をご覧ください。
▼ 2024年7月の和綿畑。
▼ 和綿の花。
▼ 和綿(実)。
▼ 収獲した和綿。
2024年(令和6)からは洋綿である「緑綿」の栽培を試験的に始めました。ちなみに、「緑綿」とは文字どおり “緑色をした洋綿” で、アメリカの綿農家で受け継がれてきた希少種だそうです。 初めは綿の毛が明るい緑色をしてるのですが、洗うと黄緑色や灰色に変化するとか。 繊維はとても柔らかく、肌触りは他の品種の綿よりも抜群に優れているそうです。
▼ 緑綿のタネ。
▼ 2024年7月、緑綿の試験圃場。
苧麻の栽培
養蚕のための桑、和綿・洋綿の栽培のほかに、ひとつ屋が取り組んでいるのが苧麻(ちょま)の栽培です。日本で木綿が普及する以前のには “大麻や苧麻(ちょま)、赤麻(あかそ)、葛、藤、楮(こうぞ)、桑、科(しな)、芭蕉、於瓢(おひょう)などの繊維で織られた布” が用いられていました。
そこで、ひとつ屋では里山で苧麻を集めて栽培し、その製品づくりに取り組んでいます。
※ 詳しくは【ひとつ屋 古代布研究所】をご覧ください。
▼ 苧麻の畑。
▼ 苧麻から得た繊維。これを織って製品にしたいと思っています。
現在、苧麻のほかにも、里山周辺で簡単に手に入る葛(クズ)から糸を作り、織って製品化(葛布)することにも取り組んでいます(葛は栽培はしておりません)
▼ 河川敷に生える葛。
▼ ひとつ屋で葛からとった繊維。現在(2024年)のところ、試作の段階です。
染料植物
繊維がとれる上記の植物とは別に、染料となる植物も栽培しています。
▼ 最も耕作面積が広いのが藍(タデアイ)です。
▼ 7月の初旬から収穫が始まります。
▼ 2024年から本格的に栽培を始めたのが万寿菊(マリーゴールド / アフリカン)です。
▼ 7月中旬から花を咲かせ、収穫が始まる。
▼ 昨年(2023年)から本格的な栽培を始めたレモングラス。
▼ 今後、耕作面積を広げる予定なのが「紅花(ベニバナ)」です。
番外編
栽培しているわけではないのですが、伝統的な染料として有名なのが里山には数多くあります。今後、それらを整理し「里山染料」として、皆様にお届けできるようにしたいと思っています。
▼ 日本茜(ニホンアカネ)。
▼ 小鮒草(コブナグサ)。
展望
ひとつ屋染料農園では、ここ伊賀の気候風土に寄り添いながら、これからも染織にかかわる植物の栽培種類を増やしていきたいと思っています。まずは、まだまだ未熟な農業技術の習得に精進し、さらには栽培している染織植物の収量を上げ “持続可能な農業と物づくり” を目指していきます!