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放棄耕作地を畑に戻す vol.1

数年前のブログ『放棄耕作地の再生と工芸作物の栽培(1)』でも書きましたが、現在の日本で「農業」といえば、 “食べるもの” を栽培することを意味します。しかし、かつては食料以外にも多くの農作物(工芸作物)がありました。 例えば、染織にかかわる農産物だけでも、「藍」や「紅花」、「綿」や「麻」、そして「養蚕」もその一つに数えられていました。このほかにも、畳のための「イグサ」や漆工品の「漆(うるし)」も、そうした農産物でした。ところが今は、 その多くが趣味や保護対象物として栽培されている程度で “産業” としては失われてしまいました。

食品のための農業ですら高齢化や後継者不足のために「耕作放棄地」や「荒廃農地」が増え、全国的にも大きな問題になっています。しかし、最近になって無農薬、有機肥料、さらには自然農法などの意識の高まりにつれ、若い人たちの“就農”を耳にするようになりました。特に、生産者と消費者を直接つなぐことのできるネット販売システムの充実により、その動きが加速したような気がします。そして、この動きをさらにスピードアップさせたのが、くしくも新型コロナウイルスのパンデミックでした。在宅勤務、オンライン会議などができるようになり、都市に住む必要がなくなったことで、これまでにはなかった働き方が “新しいタイプの兼業農家” を生むことになったのです。

ところが、やはり注目されるのは “食べるための農業” です。先にも記しましたが、その背景には “生産者と消費者が直接つながれるシステム” が存在するからでしょう。これが工芸作物の場合、農家から生産者に届くまでには、たくさんの中間業者を必要とします。例えば、綿をとっても、綿を栽培する人、糸にする人、染める人、織る人、さらには衣服などの製品に縫製する人など、さまざまな工程が必要となります。農家の立場から “縫製する人” までをつないでいくのは難しいだろうし、逆に“縫製する人” が農家までをたどるのも至難の業です。

でも、染織と縫製を学んだ人が、たまたま農業に興味があったとします。そのうえ、その人の目の前には畑も道具も、作業場もそろっているとしたら、それをやってみたい!と思うのは当然ではないでしょうか!? 今、私の目の前に、そのすべてがあります! そして、新たな土地があります!

2023年秋、背丈以上に伸びた笹竹に覆われた、かつての耕作地(あえて「放棄耕作地」と表現しません。末文をご覧ください)を貸していただくことになりました。自分にとって、 “食べるための農業” ではなく、“作るための農業” は、残りの人生をかけてよいといっても過言ではないテーマ、いや命題です。以前の放棄耕作地の再耕(『放棄耕作地の再生と工芸作物の栽培』)以上に大変そうな圃場ですが、老体に鞭打って頑張ってみるとしました。

『放棄耕作地を畑に戻す vol.2』へ続く—。

▼ 背丈以上に伸びた笹竹に覆われた、かつての耕作地
 

追記【あえて「放棄耕作地」とせず、「かつての耕作地」と表現した理由】
「放棄耕作地」といってしまえば “自らの意図で畑を捨てた” というニュアンスを感じたからです。ここに移住して、たくさんの人々と接するうちに “やめることも選択肢の一つとして畑を捨てた” のではなく、“先祖伝来の田畑を自分の時代で続けることができなくなった無念さ” を感じ、“放棄” という言葉に違和感を覚えるようになりました。今後も、便宜上は「放棄耕作地”」という言葉を用いますが、そういう思いもあることを報告させていただきます。

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