「アズキ(小豆)」は、マメ科ササゲ属アズキ亜属の一年草で、その種子(豆)は古くから世界各地で食されてきました。野生種であるヤブツルアズキが祖先で、ヒマラヤの照葉樹林帯から日本にかけて分布し、原産地は東アジアと思われていました。ところが、近年になって野生種が想定よりも広い範囲に分布していることが明らかになりました。日本でも、その歴史は古く、すでに縄文時代には栽培されていたらしく、弥生時代の登呂遺跡からもアズキが出土しているそうです。
私たちにとって、アズキはとても身近な存在です。特に、和菓子にはなくてはならないもので、抹茶とともにジャパニーズ・スイーツを代表する身近な食材ですが、今回はそんなアズキで布を染めてみました。
漢字で書くと「小豆」。ふつうなら「しょうず」または「しょうとう」などと読みますが、「あずき」というのは大和言葉(和名)だそうで、その語源は「あ」が「赤」を意味し、「つき」または「づき」が「煮崩れること」を意味しているそうです。つまり“煮崩れやすい赤い豆”という意味で、その名のとおり、布を赤く染めることができるのでしょうか――。
▼ アズキ(小豆)
【アズキでの染め方】
① まずは、ステンレスかホーローの鍋でアズキを炊きます。
② 煮汁が赤くなったら布やザルでアズキを濃し取ります。
③ できた染料(赤い煮汁)に布や糸を浸して弱火で40分ほど焚いて染めます。色むらにならないよう、時より攪拌してください。染色後、染料を捨てないでください。
④ 染め上がった布や糸は、ぬるま湯で軽くすすいで好みの媒染剤に40分ほど浸して発色・色止めをします。
▼ 媒染中の様子です。左上はアルミ、その右は鉄、左下が銅で、その右がチタンの媒染です。
⑤ 布や糸をぬるま湯ですすいだ後に ③ で取りおいていた染料(煮汁)に戻します。
⑥ 好みの色(濃度)になれば、染料(煮汁)から引き上げ、ぬるま湯ですすいだ後に風通しのよい日かげで乾燥すれば完成です。
▼ アズキで染め、各種の媒染剤(アルミ、鉄、銅、チタン)による各繊維(コットン、シルク、ウール)の色見本です。
追記/アズキによる染色では、淡いながらもアズキらしい赤みを帯びた色をはじめ、さまざまな色を染めることができました。手に入れやすく、取り出したアズキは食べることもできます。ぜひ! チャレンジしてみてください。