ひとつ屋にはネパールから来たスタッフがいます。ニックネームはビジャ君。とにかく真っすぐな性格と美しい瞳が印象的な好青年です。ひとつ屋では、海外出店のための英語翻訳と経理を担当してくれています。
そんな彼が、最近になって草木染や染織にも興味深々。その理由を聞くと「ここで使われる道具や設備、技術はネパールでも実践できそうです。新しい仕事になればいいなと思っています」と答えてくれました。そういえば、途上国に最新の機械や設備を送っても電源が安定しないので使えないという話を聞いたことがあります。
しかも、ネパールはパシュミナに代表される獣毛の産出国でもあるので、あながち“遠い夢”でもなさそうです。
少し話が変わりますが、以前のブログ(『“明治の産業革命”のように』)にも書いたとおり、ひとつ屋では“草木染を仕事にしたい!”と本気で考えています。それは伝統工芸やハンドクラフトの作家などとしてではなく、私たちが目指すのは“産業としての草木染”です。しかし、これを実現するためには、一定程度の生産性や品質が求められます。
しかし、その一方で“草木染がもつイメージは大切にしたい”とも考えています。例えば、それは天然染料らしい色味だったり、手仕事が醸し出す雰囲気だったりしますが、このことと“生産性”や“品質”を両立させるのが非常に難しい課題です。この問題を解決するヒントとなったのが、とある博物館で見た明治時代の機械でした。
下の写真は、明治時代に日本人によって考案された紡績機です。非常に手紡ぎに近い糸を紡ぐことができ、ガラガラと音を立てながら動くので「ガラ紡(がらぼう)」と呼ばれました。これは、その復刻機で電気で動いていますが、当時は水車などを利用したそうです。
※稼働しているところは、ひとつ屋の実店舗とYouTubeでご覧いただけます。
話は横道にそれましたが、ネパール(特に、途上国での地方)での興業を考えたとき、こうした機械が役立つのではないだろうか—と、ビジャ君の言葉で考えるようになりました。
そもそも、ただ「大量生産 ・大量消費ではなく、環境に優しく、そして人間くさいものを作りたい!」 と始めた草木染工房ひとつ屋ですが、たくさんの刺激のなか、新たな思いが芽生えつつあります――。
それは、日本の物づくりの原点回帰ということ。それを必要する人もいるということ。
その実現のため、ひとつ屋の実店舗に「ネパールの教育資金」のための募金箱を置いております。途上国の若者たちが海外へ出稼ぎしなくてよくするためには“母国での仕事”が必要です。よい人材を育成し、日本をはじめとする先進国に送るためではなく、母国にとどまり、将来にわたって共に仕事ができる環境のための資金を募っています。
ぜひ!ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
なお、集まった資金はビジャ君が帰国の際に実際に持って帰ってもらい、彼が生まれ育った村の小学校で文房具などの購入にあててもらおうと考えています。まずは、それが目標です。
※ ひとつ屋のための資金にするつもりはございません。